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生理用品配布を通してつくりたいのは困っている人とのつながり

この記事は、みよた町民が実際にまちを楽しみながら、まちの魅力について考える新プロジェクト「みよたの町民note」の一環です。

今日は、御代田町のつながりサポート事業として取り組まれている、生理用品の無償配布について社会福祉協議会のボランティアセンター長の小山さんと、御代田町役場担当者の土屋さん、萩原さんにお話を伺ってきました。

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(写真左:役場担当の土屋さん、写真右:社会福祉協議会ボランティアセンター長の小山さん)

※御代田町生理用品無償配布についてのプレスリリース

まずは、その仕組みについて。

【生理用品をもらえる仕組み】

①生活に困っていて、生理用品を買うこともままならないような状況の人が

A:役場からの広報資料を見て、また、人づてに聞いて、社会福祉協議会に電話をする。
または、
B:町のコンビニエンスストアや公衆トイレなどに設置されている「配布希望カード」を持ち帰り、ハートピアにカードを提出する。

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②電話やカードを受けると、福祉士の出雲さんが、ご自宅に相談にのりに行く。そこで、生理用品の配布のこと、また、サポートルームがあることを紹介。

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《サポートルーム》
今は使われなくなっていた町のスペースを開放し、ここでワイワイ人と話す、とまでいかなくても、お茶を飲んだり、とにかく一歩、家の外に出る体験をできる安心の居場所になれたらと、場所を提供しています。wifiも整備してあります。

③ハートピアみよたで、生理用品を受け取れる。
サポートルームでは、相談員と話したり、ゆっくり過ごすこともできる。

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電話受付の他に、社会福祉協議会の方からも、家からなかなか出られない方の支援をされてきている企業さんに取り組みを紹介したり、これまでのつながりを通して、届けたいところに届くようにとはたらきかけています。

生理用品はきっかけで、つながることが目的

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萩原(役場):
「生活保護など支援が必要な方はやはり一定数いるんです。」

小山:
「そうやって役場に出て来れる方はまだ良いほうで、衛生管理できていない場所で誰にも会わずに暮らしているような方も実際にいらっしゃいます。
この取り組みが、そういった通常のセーフティーネットからもこぼれおちてしまっているような方たちが、一歩外に出て、ヘルプを出せるきっかけになれば、と思っています。」

土屋(役場):
「特に、このコロナ下の状況においては、何も働きかけなければ、一人、家で困窮を抱えている人たちの声は、ますます遠くなっていってしまいます。」


そこで、多くの女性が物理的に必要とする日常品である生理用品の配布を通して、その人たちとつながれたら、と思いをかけます。

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ただし、生理用品をもらいにいく。という行為は、女性としては、なかなかハードルが高く感じます。そこはどのように取り組まれているのでしょう。


小山:

「女性トイレやATMなど、小さなスペースにカードを置かせてもらっています。そのカードを渡して生理用品を受け取りできる場所も、公の場である役場ではなくて、ハートピアみよた(福祉協議会)としています。そこでも身分証明書など必要なく、カードを渡せばもらえる、という風に、できるだけ心理的ハードルを越えられるようにしています。」


これまで、社会福祉協議会で勤務されてきた小山さんの経験が、当事者の目線に寄り添い、その動線をつくっているようです。

小山:
「本当に生活に困っている方は自炊する意欲も出づらいので、スーパーよりも手軽に食べ物が買えるコンビニエンスストアに行くんですよ。人目に当たることを避けるし。それで、コンビニエンスストアの利用が多くなってしまうと思います。だから、コンビニエンスストアを中心にカードを置かせてもらいました。」

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自炊=節約のイメージがありましたが、自炊できること自体、ある種の豊かさの上にある自由だということです。

生理用品配布と聞いたとき、ナプキンを買うお金がないなら布ナプキンや着古した布も使えるし、経血コントロールなんかもあるけどな・・・と思ったりもしたのですが、それは、人とのつながりがあり、ある程度健康や衛生に対して情報を受け取り、日常的に洗濯をできる状態からの発想でしかなく、いかに当事者とおなじ目線で社会をみていくかということが大事なのだと思い知りました。

小山:
「コンビニエンスストアにも生理用品は売っているので、断られるのを覚悟で行ったのですが、皆さん快く受け入れてくださり、暑い中ご苦労さまです、なんて冷たいお茶まで出していただいて、ちょっと感激しましたね。」


こうやって、常に相手の立場になって視点を動かし、足を動かして地域の人と一人ひとりつながっていく。
その活動がゆっくりと人の心を動かしていくのだと思いました。

つながりサポートを可能にするのは・・・

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土屋(役場):
「この取り組みは、地域女性活躍推進交付金の助成を受け、つながりサポート事業として、全国の他の地域でも展開されていますが、取り組みを始めると、他地域の行政の方から複数問い合わせがありました。」


こうしたことに取り組みたくても、実際にどうやっていけばいいのか頭を悩ませている自治体も多いようです。

土屋(役場):
「御代田町は、女性活躍支援というの分野に関しては遅れていて、これまでやって来ていなかったんです。」


そこで小山さんに相談が投げかけられました。
小山さんは、元々、御代田町役場で27年働かれていた経験もあり、これまでも、役場で出る急なお達示を何度も引き受けてきた、とのこと。

小山:
私がそういう唐突な話がけっこう得意なもんで。なぜかそういうのがよく回ってくるんです。」

兼松:
得意・・・!? それ自体がすごいですね・・・。これまでそういう経験がある小山さんだからできることなのでは・・・?」

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小山:
「いえいえ、一人だと引き受ける自信はとてもなかったです。ちょうどよいタイミングで、出雲さんという素晴らしい福祉士の方が相談員を担ってくださり、それがあってできていることです。」


出雲さんは、元々は御代田町の保健福祉課で相談員をされていて、障害者のための作業所「憩いの家」の運営をされていた方。そして、その出雲さんがいる間「憩いの家」は活況を呈したとのこと。

小山:
「こういうことは、ある程度、やはり人のチカラというか、人柄によるところもありますね。技術を教えて、はい、どうぞ、と言ってできるものでもないですからね。」


社会福祉士、精神保健福祉士の資格をお持ちで、これまでに相談員として働いて来られた出雲さんに、小山さんは全面的に信頼を寄せています。
その信頼のうえで、相談者さんとのやりとりは、ビジネスライクにことを進めるのではなく、
「深くきりこんでいく。深くはいってくれ。」
とお願いしているそうです。

状況に応じてひとりひとり寄り添うことができる出雲さんの人柄、これまでの経験からのつながりもあって、サポートルームには徐々に予約が入り始めています。

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(社会福祉協議会ボランティアセンターの出雲さん)

元々、御代田町役場という同じ職場にいた小山さんは、役場担当の土屋さんとも、スムーズにコミュニケーションができている様子。担当されている方たちを信頼し、任せあっている姿が心地よく目に映ります。

"社会的自立とは、一人で立てるようになることではなく、一人で立たなくてもいいように他の人にうまく頼っていけるようになること"

とも言われます。

このサポート事業のまんなかにいる人たちが、それぞれ、自分の領分でできることをし、自分でできないところは他の人に頼り、任せて、感謝しあっている。まんなかにこの空気があるならば。と、未来を明るく展望できる気持ちになります。

女性活躍支援

つながりサポート事業では、生理用品の配布をきっかけとした相談支援、居場所づくりのほか、女性が活躍していける社会を実現するため、講演会なども企画しています。

11月には長野県社会福祉協議会の防災福祉アドバイザーで特定非営利法人さくらネット代表理事の石井布紀子さんの講演会も予定しています。

◎災害時にも活躍する女性たち
・日時:2021年11月19日(金)18:30~20:00
・場所:御代田北小学校 体育館
・申し込み、問い合わせ 0267-32-1100/御代田町社会福祉協議会ボランティアセンター地域活動センター

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また、社会福祉協議会ボランティアセンターでは、災害ボランティアをできる方や、様々なに町に社会貢献できるかたたちを増やしていく取り組みをされています。


小山:

公のためにある程度力を使ってもらえる方と、一緒にまちをつくっていきたい、と思っています。」

先のことを考えないで、目の前のことをやっていくだけ

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これまでも無茶ぶりを引き受けてこられた小山さんの話が気になり、そういうとき、どのように対応するのか、これまでの経験からのヒントを伺ってみました。


小山:

「あまり先のことを考えないことですかね。来たものをうけとめていく。そうしていると、何か一つの分野での達人になるわけじゃないから、そんなに何も残してきていないですけどね。」

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その言葉は、まっすぐに胸に響きました。
様々な有効そうな情報や手法を取り入れ、何かを獲得し、上り詰めるようにして、理想実現をしていく人たちに渦巻く昨今でのなんとも人間らしいシンプルな社会貢献。

「来たものをうけとめていく」

多くの人が、この一つのことさえできたら…先のことをあれこれ予測したり、そのために情報をかき集めたりしてないで、目の前にたち現れる人や状況にしっかりと向き合えたなら…社会問題の多くは発生しないで済むのではという気さえしてきます。

頭ではなく、身体をつかって動いているからこそ、ちゃんとハートから、飾らない人のぬくもりがある言葉が出てくる。
そんな人たちだから、ギュッと一人困難を握りしめていた人が手をひらいて助けを求め、胸に詰まっている言葉を話し始めることができるのかもしれません。

最後に、この記事を読んでくださっている方に、伝えたいメッセージがあれば、とたずねました。


小山:

できるだけ隣近所のことをおせっかいに、気にかけてみてもらいたいですね。」


一人の人間として、いま、自分が住んでいるまわりを少し気にかけてみること。貧困問題、生活困窮という字をみると、それだけで大きく身構える気持ちになり、自分に何ができるのかと戸惑いますが、小さな目の前のことから、わたしたちも日常に取り組んでいけそうです。

「いるのかな?いないのかな?」
「大丈夫かな?元気かな?」

日常にそのまなざしがあるだけでも、思っている以上に、社会は生きやすくなるのかもしれません。


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▼こちらが、御代田町での生理用品配布カードを置いている場所です。
「ここにもどうぞ置いてください」と思われた方は、御代田町社会福祉協議会(0267-32-1100 /担当:出雲)までご連絡ください。

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[取材構成編集・文]兼松真紀