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ふるさと納税に「申し訳ない」の気持ちを感じたことはありますか?【勉強会レポート】

この記事は、みよた町民が実際にまちを楽しみながら、まちの魅力について考える新プロジェクト「みよたの町民note」の一環です。

年末まであと少しとなったところで、御代田町、ふるさと未来設計室主催のふるさと納税オンライン勉強会が開催されました。

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私、イセオサムもこちらに参加してきたのですが、寄付やSNSマーケティングのプロフェッショナル、御代田町長による講演とディスカッションの中で多くの気付きが得られました。
また、ご参加頂いた各地方自治体の方同士でも、担当者が抱える悩みやふるさと納税、寄付に対する思いを共有できたようです。

ふるさと納税について学びたい自治体の方に向けて、内容を一部抜粋して共有させていただきます。

ふるさと納税をいただくときに、「申し訳ない」の気持ちを感じられるか

印象に残ったのが、小園町長からの上記の言葉でした。(パネルディスカッション中に言語化されたそうです)

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寄付を受ける側は、他の町や市の税収を減らしてしまって申し訳ない。

納税する側も、自分の町や市の税収を減らしてしまって申し訳ない。

こうした気持ちを自治体、寄付者それぞれが持つことで、返礼品偏重と言われるふるさと納税もより素晴らしいものになっていくのではないか、という視点です。

寄付者の目線に立ったことはあるか?

自治体の職員の方の多くは、一個人として他の自治体にふるさと納税をすることを禁じられているそうです。しかし、それでは寄付者の目線に立って事業を運営するのは難しいのではないか、という意見がありました。

上記の「申し訳ない気持ち」をお互い持ちつつ、実際に寄付者と同じ体験して顧客の気持ちを理解してほしいとも述べました。

以前、御代田町に移住する前にご自身でも行っていたふるさと納税で得た問題意識をもとに、生活者の目線に立ったとき、寄付の使い途を見える化したらよいのではないか、と産まれたのがみよたんクエストとのことです。

寄付金1円=1ゴールドとし、寄付が集まるたびに御代田町の妖精「みよたん」がレベルアップします。レベルごとに、町をよくするためのプロジェクトが実現していく様子を表現したサイトです。

レベル10を達成すると「公園遊具整備基金」が得られる

寄付者が得たいものは「感謝」なのではないか

後のデータにも見られますが、返礼品目当てでない寄付が2-3割あることがデータから分かっています。そこから読み取れるのは、寄付者が得たいものは、必ずしも返礼品だけではない、ということです。

このことから、町長自ら寄付者と返礼品事業者に感謝の気持ちを伝えているとのことです。

小園町長が濱野皮革工藝さんへ表彰状をお届けに

返礼品を提供した事業者に訪問し、表彰する。

寄付者全員に手紙を書く。

と、自ら動けるのはこの自治体の規模を生かしたコミュニケーション手段だと思います。だって、町長から手紙が届いたら嬉しいですよね。(現在は3,500人くらいだそうです)
また、事業者への訪問に関しては、参加自治体からも「うちでもやってみたい!」という反響があり、具体的な方法について質問されていました。


ふるさと納税という寄付の仕組みにより、感謝が日本全国をめぐるようになったら素敵ですね。


続きまして、ファンドレイジングのプロフェッショナルから講演をいただきました。

マーケティングを行うために自治体が認識すべきこと

by 渡邉 文隆(信州大学社会基盤研究所 特任講師、公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団 社会連携室長)

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渡邉さんは、山中伸弥教授が理事長を務めるあたらしい公益財団である京都大学でファンドレイジングを担当する傍ら、研究もしている方です。

自治体はマーケティング活動に慣れていない

それは、下記理由によるものです。

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通常、商品を販売して利益を得る活動をすることが少ない自治体だからこそ、マーケティングの考え方を学び、実践することが必要です。

マーケティングとは、ちょっと我慢して、迂回して、大きな成果を得ること

普通の営業マンが商品を口頭で説明して売るのと対象的に、マーケティングは「売れる仕組みづくり」を行うことです。

チラシをつくって、配り、売上を増やして、またチラシを刷る、という流れのように、ふるさと納税を得るためには仕組みをつくる必要があります。

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自治体が寄付を集めるために認識すべき事実

ふるさと納税制度自体に問題があるとの指摘も多いのが現状です。返礼品偏重との主張もありますが、一方で新型コロナ関連で1000万円以上の寄付を受けた自治体は30以上あったそうです。

つまり、「返礼品ありのふるさと納税」と「寄付」では、生活者の動機が違うことを表しています。

このことから、

・返礼品ありのふるさと納税と通常の寄付はそもそも違う市場である

と定義するのが有効です。
これまで返礼品を主とした施策を行ってきた自治体が多い中で、そうではない、社会をよくするための寄付については、これから伸びしろが大きい領域であるのではないでしょうか。

その他、

・高額寄付をする人ほど、使い道を限定しい気持ちが強い傾向がある。

・担当者を配置すると寄付額の増加につながる。

・トライアルギフト(試しにする寄付)が後の高額寄付につながることがある。

など、先行研究に基づいた実践的なお話をいただきました。

当日の講演資料の抜粋版は以下よりご覧ください。


続きまして、より実践的な内容に入っていきます。

ふるさと納税のリアルな事例と施策

by 武内 一矢(株式会社NAVICUS 代表取締役、元ふるさとチョイスマーケティング戦略室長)

日本全国の自治体を支援し、ふるさと納税を盛り上げてきた武内さんからは、今すぐできる、かつ本質的な施策案を提供いただきました。

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マーケティングで大事なのはこの3つですね。

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そして・・・

返礼品→町への興味 と段階を踏もう

返礼品ありきのふるさと納税は良くない!という論調があるものの、純粋な寄付との二元論ではなく、まずは返礼品目当てでもよいので、そこから町を認識、交流や訪問と段階を踏む形で人を動かすことができる、とも。

実際、返礼品目当ての方が7-8割とのことですが、逆に2-3割の方はそれだけじゃない、と読み解くこともできます。

次に大事なのが、

寄付者の視点に立って施策を考えよう

心当たりある方もいるかもしれませんが、たとえばふるさとチョイスなどのポータルサイトに行くと、「うなぎ」で検索しますよね。

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ふるさとチョイスでうなぎを検索

まずは、魅力的な返礼品で興味を持ってもらうことを受け入れましょう。特に検索一覧に表示される写真は、他の返礼品と比べて魅力的に見えるかが何より重要です。

そして・・・

ランキングに入る人気の商品を一つ以上つくろう

寄付者が一番見ている検索結果画面で表示されなければ始まりません。そのために、人気の商品をつくることが必要です。

たとえば、数ある「うなぎ」で勝負するなら、この中で寄付者に刺さる工夫、差別化をしましょう。
例えば、鹿児島県志布志市は、

  • だれが育てたか

  • パッケージはどんな内容か

  • たれとさんしょうは何個ついているのか

など、生活者目線に立った写真を掲載しています。ここらへんのノウハウは、楽天やYahoo!ショッピングなどに代表される、ECのセオリーが踏襲できるはずです。

ふるさとチョイスより

最低限はメルマガとLINEの活用

一度寄付をいただけたら、その後にメールマガジン、TwitterやLINEなどのSNS、DMなどで他の商品をご案内したり、街の魅力や取り組みを継続的にお伝えしていきます。

自治体によってはリソースが限られているので、全部の施策を実行するのは現実的ではありません。そこで、よりダイレクトに寄付者とつながれるメールマガジンとLINEからスタートするのがオススメとのことです。

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資料もご提供いただいたので、もっと深く知りたい方は、こちらからDLしてくださいませ。大盤振る舞い・・・!


という形で、2時間にわたって各自治体がふるさと納税について学び、議論する場を設けることができました。

ふるさと未来設計室では、専用のFacebookグループにて交流をしておりますので、またアウトプットがありましたらご報告いたします。

以上、勉強会のレポートをお届けしました!

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